第1章

冷たい風が吹いていた.ほほの感覚が無くなりかけてきた頃,じわっと温もりが赤く染まった.弱弱しく太陽は西に沈みかけて,変わらない街の景色が堤防沿いの道にあった.立ち止っていた僕は,歩きだすことを思い出し,縛り付けていたものが何かって,鬱々とした感情の理由がわかったような気になった.「人は挑戦をやめたとき,老いる」と,今朝のテレビで聞いた言葉を思い出す.歩き出す僕を引きとめていたのはもう一人の僕だ.決断を先送りにして,傷つくことを恐れる.そしてそんな僕を見つめた僕はその場所で立ち止まってしまった.