現実の果て

逃げずに本音で語ろうと思うんやけど,それはなかなかに困難だ.
その場その場では,目,鼻,耳,口,脳みそが思い思いに色んなことをしゃべるので収拾がつかなくなってしまう.
特にうるさいのは,目と耳と脳みそだ.
やつらはどうしても,見えてる範囲,知っている範囲が全てで,その限界の線をきっちり示そうとするので困る.
目や耳や脳みそに訪ねると,本当の果ては知ることができない.本当の果てはもっときっとずっと深くて広くて青い.グランドキャニオンのような天井の無い空だ.
絵の具をぐちゃぐちゃにして,真っ白なキャンパスの上を這ってみる.汚いものへの憧れ.
どんな高価なものでも,触っちゃえば一緒だ.
鳥の声がして,僕はもう舞台を降りた.人間の業のオン・パレードに身を置く一人の僕だ.
孤独でありながら,かつそれ以前のところで人はどこまでもつながっている.決して美しくある必要は無く,完璧である必要も無い.
果ては20億年前のマグマの地層にまでも続いている.